アメとムチはもう古い!ほめて育てるコーチング|新 コーチングが人を活かす
今回は、2000年の発売以来累計20万部のベストセラー
「新 コーチングが人を活かす」
について解説します。
本書はですね、一言でいうと仕事を進めるうえで必要な人材をいかにして「人財」に変えていくか、そのためのマネージメント方法が書かれた1冊です。
フリーランスも会社員の方も、仕事をするうえで悩みが多いのはなんだかんだで人の問題です。
- フリーランスであれば、協働者や外注業者
- 会社員であれば、部下や上司
- スポーツ選手なら監督やチームメイト
- 学校なら先生と生徒
- 家族なら親と子供
などなど、我々が仕事をするとか生きていく上で人とのつながりを持っている以上、人の悩みが消えることはありません。
人との摩擦が大きくて前に進めなかったり、人材をうまく活用できなかったり、足を引っ張られたり、思い通りにいかないものです。
逆に、互いに協調性があり、足りない所を補い合いながら、人とのつながりを上手に利用しながら進めたとすれば、誰もがうらやむ結果を得ることができるでしょう。
しかし、残念ながらそういった人間関係や意識の高い組織というのは、放置しておいて勝手に出来上がる事はありません。
発注者・上司・監督・親など、責任ある立場の人がマネージメントをしながら統率を取り、しんどいかもしれないけど互いに信頼関係を築きながら徐々に作り上げられるものです。
ですが、現実はどうでしょう。
- 横柄でムカつく発注者
- 話が通じないクソハゲ上司
- 昭和スタイルのど根性パワハラ監督
- 生徒になめられてしまう先生
- ネグレクト
などなど、理想と現実には必ずギャップが存在します。
でもそれは、指導者が人を統率するスキル、つまりコーチングの方法を知らないだけなのかもしれません。あるいは、時代の流れを無視して、昔ながらのやり方を変えようとしていないのかもしれません。
昭和、平成、令和と3世代が入り混じっている多様性のある現代だからこそ、古い考えを捨て正しいコーチングを学び実践する必要があります。
- 誰も付いてこない
- 言っても理解してくれない
- 人の活かし方が分からない
- そもそも性格的に向いていないのか?
といった指導者のあるあるな悩みに対し、本書はその解消方法をまるっと教えてくれます。
おいおいマジかい。そんな根深い悩みを解決できるなら今すぐ教えてくれよ。
となると思いますので、早速テクニックの詳細を解説していきます。
ではいきましょう!
目次
コーチングとは
ではまず下準備の1つ目として、コーチングとは、ということについてお伝えします。
本書では、コーチングとは「未来を創り出す主体的な人材を創ること」だとされています。
ざっくり言えば、自分で考え行動できる人です。
例えば、みんなでキャンプをやるぞ!となった時、
- キャンプの場所探し
- キャンプに必要な物は何か
- おすすめのメーカーはどこか
- 安く買えるのはAmazonか楽天か
- 当日の天気はどうか
- キャンプじゃなく今流行のグランピングでもいいんじゃないか
みたいなことを、誰からも指示されずにググったりYuTubeで調べたりして自分で動ける人です。
「んー、キャンプって用意が面倒だから皆さんにお任せ、おれは食べるだけ。」
みたいに、集団行動を乱すような、1mmも動くつもりのない受動的な考えはコーチングの世界では完全NGです。真っ先にシバかれます。
そして2つ目。コーチングとは、
「問いを2人の間に置き、一緒に探索し、その中で相手の発見を促すもの」
とされています。
コーチングというと、教える側が上、教えられる側が下、という上下関係のもと相手が納得する形で教える行為、と思われがちですがそうではないと。
目的地に向かう方法を一緒に考えながら、且つ相手に発見してもらう、という感じです。
例えば、本気で甲子園を目指そうとなった時、
- 誰がキャプテンにふさわしいのか
- エースは誰か
- 打順はどうするか
- ライバルに勝つための戦法
- ミスを減らす練習
- なぜ負けたのか
など、監督が全てを指示したり教えたりするんじゃなくて、それら一つ一つを先ずは個々の選手で考え、次に選手間で腹を割ってとことん話し合い、最後に監督に相談しながら答えを導き出す、といった感じです。
- ミスした選手を責め
- センスがないと暴言を吐き
- 気に入った選手だけ起用する
そんな監督は指導者ではなく、一国の独裁者に過ぎません。こうした残念な指導者になるんじゃなくて、人を育てるという超重要なミッションを達成できる人になる。そのために、我々は時代に合ったコーチングを学ばなければなりません。
今回は指導的立場にある人のよくある悩み、
- そりが合わない相手がいる
- 相手に仕事や判断を任せられない
- 相手を伸ばすほめ方が分からない
の3つにフォーカスしまして、その解消法を解説していきたいと思います。
では、さらに行きましょう!
そりの合わない相手とうまくやるテクニック
会社、チーム、学校など人が集まる所には必ず人間関係の問題が発生します。主な理由は、性格が合わない、意思疎通が思うようにいかない、考え方が違う、などですよね。
でも、これは珍しい事ではありません。というか普通です。
例えば学生時代、クラスに30人いても全員と気が合うことなんてありません。本当に気の合う人って1人、多くて2人。ゼロということも珍しくないです。
育った環境、教育、考え方は全員違いますから、合致する方が奇跡なんです。
ただ、学生は互いに利益を得ようとするわけではないので気が合わなくてもなんとかなりますが、仕事はそういきません。
仕事を回したり、新規の仕事を取ったりするために、そりの合わない人とでもうまくやって行く必要があります。
そのためのテクニックとして本書で語られているのが、
- 相手のタイプを見極める
- 相手の上や下に立とうとしない
- お互いの違いを愛する
という3つのテクニックです。
相手のタイプを見極める
というのは、下記のどれに該当するのかを指導者が理解するということです。
- コントローラー・タイプ・・・指示したいタイプ
- プロモーター・タイプ・・・創造的タイプ
- アナライザー・タイプ・・・計画・実行するタイプ
- サポーター・タイプ・・・応援するタイプ
例えば、コントローラー・タイプというのは率先して指示は出すけれど、逆に指示されても言うことは聞かないぜ、というジャイアンタイプです。
このタイプの人に指示を出すと、ギッタギタにしてやる!とか言われてボコられるわけです 笑
つまり人によってタイプが違うので、あの人はこのタイプだな、という位置づけをしてからコーチングに入ります。
相手の上や下に立とうとしない
というのは分かりやすく言えば素の状態で接しましょうということです。
例えば、監督が選手に対して横柄な態度を取る事があるけれど、そうじゃないんだと。
あいつより上だとか下だとか余計な感情を持つと心に波が立ってしまい、関係がぎくしゃくしてうまくいかないんだと。
そうならないために、コーチングをする側は背伸びせず、損得勘定も無くし、フラットな感情で接しましょうということです。
お互いの違いを愛する
というのは意見や思考の違いを顕在化させ、互いにそれを受け入れて、新たな発見をしていきましょうということです。
例えば、会議の場で10人中1人だけ正反対の意見を言ったとしても、それをつぶすんじゃないと。
逆に、
たしかにそういった意見もあるよねー
みたいな感じで異論を愛するんです。
愛とか言うとちょっと違うかもですけど、要はみんながその異論を受け入れて、違った切り口から新たな発見を促せるように向かわせましょう、ということです。
以上がそりの合わない相手とうまくやるテクニックです。
総じて、コーチングをする側は絶対に個性や意見をつぶしてはいけません。そりの違いを尊重し、認め合う環境や組織を作ることでより良い方向へ向かわせる、それがコーチングだということです。
相手に仕事や判断を任せられるようになるテクニック
相手に仕事を依頼した時、こちらが望んだ結果が来ればいいですが、そうじゃない時は思わずイラっとすることもありますよね。
それが積み重なると、仕事や判断を任せられなくなるから、細かく指示を出してその通りにやってくれればOK、という風になります。
対象がパートさんとか学生アルバイトの方、つまり時間給で働いてもらってるならそれでもいいんです。
しかし、フリーランス同士でプロジェクトを推進するとか、会社で部下を育成させなきゃいけないとか、そういった時は仕事や判断を任せられるようになるためのコーチングが必要になります。
そのテクニックとして本書では、
- きっと解決策を見つける 、と相手を信頼する
- 失敗する権利を与える
の2つが書かれています。
きっと見つける と相手を信頼する
まずはじめに、きっと見つける と相手を信頼する
についてです。
一般的にコーチングというのは、相手がどうすればいいか分からずに困っているとき、相手がなるほど!と感動するようなアイデアを提案する、そういった感じかもしれません。
しかし、本書で提唱されているのは、
「問いを2人の間に置き、一緒に探索し、その中で相手の発見を促すもの」
とされていますので、逆に簡単に答えを与えてはいけないということになります。
例えば、コーチする側が「どうすればいい?」という質問を投げかけて、たとえ相手が黙ってしまっても答えを差し出してはいけません。待ちましょう。
助け舟を出したい気持ちをグッとこらえ、口出しせずに”沈黙を聞く”こと。
そうすると、時間を費やしてでも問いを投げかけられた相手は必死に案をひねり出してきます。
最初は的外れな案が出てきたとしても、そのうち最適解を導き出してくれると信じて待つ、ということです。
失敗する権利を与える
続いて、失敗する権利を与える
についてです。
例えば、のび太はドラえもんから拝借した道具を欲望のままに使い、最後は必ず自分が痛い目を見ます。
懲りることなく毎回同じ思いをするわけですが、普通なら失敗を学び成功へと変えていきますよね。
コーチングする側は、その成功までのプロセスをじっと見守りましょう、成功するまで失敗できるチャンスを相手に与えてあげましょう、ということです。
仮に、失敗したらクビだとか仕事を二度と渡さないとか言われたら、普通にイヤですよね。はぁ?とかなりませんか。多分、その人には誰も付いていきません。
だから最初から、ある程度は失敗するもんだ、という前提でコーチングする必要があるんです。
コーチングの観点からすれば、ドラえもんはのび太に失敗する権利を与えすぎですけど、まあそんな感じです。
相手をうまくほめるテクニック
最後3つ目。相手をほめるテクニックについて解説します。
コーチングにおいて、ほめるという行為はめちゃくちゃ大事です。もしかしたら、コーチングの中で一番重要であり、やらなきゃいけない事なんじゃないかと思っています。
理由の一つとして、その昔アメリカの心理学者であるマズローが唱えた「欲求5段階説」というのがありまして、詳細はググっていただくとして、人間が成長するために必要な基本的欲求とされています。
- 生理的欲求
- 安全の欲求
- 社会的欲求と愛の欲求
- 承認の欲求
- 自己実現の欲求
ほめるという行為はまさに「承認の欲求」のど真ん中に当たるわけです。
人は常に誰かに認められたいという欲求があって、
例えば、インスタとかでリア充を演出してフォローワを増やす、というのも承認欲求を満たすためです。
そこで思ったのは、
じゃあ、”すごい!”とか”上手だ!”とか、とにかくほめ言葉を並べればいいんだな、
なんて思いましたが、考えが単純すぎました。
確かにこれでもほめられた方は嬉しいですが、
「いやー、そんなことないっすよ。たまたまです。」
とか言って謙遜してしまいます。
これでは相手がほめ言葉をダイレクトに受け取ってくれないから、効果が薄くなります。
では、どうすればいいか?
ほめ言葉の後に、”自分がどう思ったか”を付け加えます。
例えば、
「君の書いた絵はすごくうまいね。見ているこっちの心が和むよ。」
みたいな感じです。
自分の感情を付け加えると、相手に受け入れられたという承認欲求がグッと高まります。
言葉を足すだけですから、今すぐにでもできます。
以上が、相手をうまくほめるテクニックです。
フリタメ的まとめ
いうことで、今回は鈴木義幸さんの著書「新 コーチングが人を活かす」について解説しました。
まとめると、本書は指導的立場の方が周りの人を上手にコーチングするノウハウがぎっしり詰め込まれたおすすめの一冊です。
人を成長させ、人材を人財に変えるためには、
結論、
- 相手のタイプを見極めて、お互いの違いを愛しましょう
- 相手に失敗する権利を与え、きっと答えを導き出せると信じ続けましょう
- ほめ言葉のあとに自分の感情を付け加えて、承認欲求を満たしてあげましょう
そんなお話をさせて頂きました。
そして最後にフリタメ的学びとして、よく昔から言われている「アメとムチ」について触れさせて頂きたいと思います。
アメとムチというのは、アメである報酬を与えるかたわら、失敗したらムチでしばく、つまり罰を与えるというスパルタ要素を含んだ指導方法の一つです。
実は本書にはアメとムチが必要だ的な事は一切書かれていません。どちらかというと、ムチは完全否定に近いです。
そこで思うのは、
- 承認欲求だけ満たせば人は育つのか?
- ほめてばかりだと、図に乗るんじゃないか?
- 叱るという行為は本当に不要なのか?
という疑問ではないでしょうか。
ではここで、一旦コーチングの原点に返ってみます。
冒頭にもある通りコーチングとは、
- 未来を創り出す主体的な人材を創ること
- 問いを2人の間に置き、一緒に探索し、その中で相手の発見を促すもの
です。
では、叱るという行為をしたらどうなるか。
- 叱る方は感情的になる
- 叱られた方は失敗を恐れてチャレンジしなくなる
⇒その結果、主体的な人が育たない
簡単に言うとこういう結果になり、コーチングが求めているものとは真逆になってしまいます。
もちろん人によっては、叱られた方が燃えるぜ!みたいなド根性タイプもいるでしょう。
でも、その人が将来コーチングの立場になったらどうでしょう?
自分がこの方法でやってきたんだから、同じように気合と根性で指導してやるぜ!みたいになる可能性大です。
指導される側は必ずしもド根性タイプではありません。というか少数ですので、指導方法が合わずに挫折する人や間違った方向に進んでしまったり、
「未来を創り出す主体的な人材を創る」
というミッションを達成できません。それだけじゃなく最悪の場合、指導側がパワハラで訴えられます。
一方でこんなケースもあるでしょう。
叱ったのは、相手が怠慢な態度だったからだと。叱ることでハッと目を覚めさせ、二度としないように緊張感を与えたんだと、そんな話もあるかもしれません。
まあこの状態で叱ることについて完全否定はできませんが、一つ致命的なミスをしているかもしれません。
それは、
なぜ相手は怠慢になっていたのか?
ということがスルーされてしまうことです。
訳あって一時的に目標を見失っていたかもしれませんし、やる気はあるけど、解決方法が分からず手が付けられなかったのかもしれない。
あるいは、家族や友達関係で問題があり、集中できなかったのかもしれない。
こうした何らかの根本的な原因が潜んでいる可能性があるんです。
相手がやる気なさそうな時、叱るよりも先に指導者がやることはコーチングの前提事項である、
「問いを2人の間に置き、一緒に探索し、その中で相手の発見を促す」
ということです。
- 目標を失った原因
- 手が付けられなかった原因
- 私的な原因
など、まずは問題を解決するためのコーチングをしましょう。それさえできれば怠慢が解消される可能性大です。
こうして考えると、ケースバイケースで叱るということが100%悪いとも言いにくいけど、叱ることのメリットとデメリットを足し引きすると総じてデメリットなんじゃないかなーって思います。
なんだかんだ、人って叱られたくはないですし、ほめられて気分上々で仕事した方が意欲的になるしいい結果に結び付きます。
もし向かっている方向が間違ってたら、
「いや、君、そっちの方向じゃないよ。よーく考えてみて。」
ってゆう感じで、指導者が軌道修正のヒントを与えてあげればOK。やる気をなくすこともありません。
実際問題、普段から人をほめてなかったとしたら、コーチングを教わったからといって、いきなりほめるのってちょっと難しいですよね。
昨日まで、
「おい田中、そーじゃねーだろ。こうやれ!」
みたいに威圧的だった人が翌朝には、
「いや~田中君、君の判断はいつも適確だね。とても助かるよ、ありがとう。」
とか言われたら、普通にキモイですよね 笑
ですから、もしコーチングで悩んでいる方がおられましたら本書を参考にしつつ、今からでも相手をほめる事を始めましょう。
そして、気味悪がられない範囲で、互いの距離を縮めながら信頼関係を築いていって頂ければと思います。
今回は以上でございます!